高さがあったなら。

「足首がみえる丈です」
といわれて試着するも、常にフルレングス。
店員さんの、「あ」というなんともいえない表情に、
何度会ったことか。

そういうとき、ヒールのある靴を履けば、
ちょっとは足長効果も得られるのだろうけど、
どうしても、苦手で履けない。

あと数センチ。
それだけあったら、もう少しキマルのになあ。

という思いは、
人も花もじつは同じだと思う。

長さの足りない枝もの。
見慣れたせいで、平凡にみえる花。
そんなときこそ、
「脚のある」器に入れる。

いわゆる高台、といわれる部分。
ここがちょっと高いだけで、
花の場がたちどころに生まれる気がするのだ。

脚の高さは、増すほどにフォーマル感が出る。
日常の花には、数センチの、このくらいも丁度良い。

花 藪手鞠 日陰躑躅 縞薄
器 山野邊孝